限りある資源の有効利用と代替資源の創製

周期表第2周期の炭素・窒素・酸素を縦糸とした「有機化学」に第3周期以降の高周期典型元素を横糸とする「典型元素化学」を組み合わせることによって、有機合成化学における新知見を得るとともに、生命科学・物質科学などに役立つ新しい物質の創製を目指しています。21世紀の現在、限りある資源の有効利用や代替資源の創出は現在の人類に託された大きな課題です。これまでに見出されていない高周期典型元素を含む有機化合物の機能の解明は、物づくりの化学(有機化学etc)の分野に有用な情報を提供すると考え、下記のテーマに取組んでいます。

(1) 新規超原子価化合物の創製と構造・物性・化学反応性の解明

超原子価化合物とはオクテット則を超える原子価を持つ原子を含む有機化合物を指します。本テーマでは、超原子価結合の存在が期待される15および16族元素を含む新規な化合物をデザインして、その一般合成法を新たに開発するとともに、得られた化合物群の有機合成反応への活用として元素戦略を指向した遷移金属触媒下での炭素―炭素、炭素―ヘテロ元素結合形成反応への応用を行なっています。


(2) 周期表横断型元素化学を基盤とした機能性複素環の構築と物性解析

医薬品や農薬には複素環を構成成分に持つ化合物が数多く知られています。高周期典型元素を含む複素環は、従来までの窒素、酸素、硫黄を持つ複素環化合物と比べ極めて合成例が少なく、構成元素の種類の違いによる物性・化学反応性の系統的な比較は全く行われていませんでした。そこで、13族から16族元素を含む新規複素環化合物の一般合成法の開発と、構成元素の種類の違いによる芳香族性の有無、安定性への影響、発光挙動などの基礎物性を明らかにしながら、新しい高機能材料(バイオマーカー・有機EL・太陽電池など)の提案を目指して研究を進めている。


(3) 高周期典型元素化合物を活用したバイオオルガノメタリクス

高周期典型元素を含む医療用医薬品として酒石酸アンチモン(Sb)や没食子酸ビスマス(Bi)が挙げられます。しかしそれらは無機化合物であり、高周期典型元素を含む有機化合物の生物活性に関する知見は非常に少ないのが現状となっています。有機化合物は中心原子を取り巻く有機フレームをデザイン・合成すればその種類や数は無限に広がります。本テーマでは、上記(1)(2)と密接に連携しながら特定の元素に囚われることなく、周期表横断型元素化学を展開することで、網羅的に高周期典型元素を含む有機化合物のライブラリーを新たに構築し、ケミカルバイオロジーを生物系共同研究者と展開しながら、抗がん・抗菌活性等の生物活性を示す化合物や生命科学の理解に有用なツールとしての試薬の創製に積極的に取組んでいます。


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薬学部 薬化学講座
教授:安池修之
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