第64回 薬学セミナー

日時 平成25年6月19日(水)17:00~18:00
場所 薬学部棟 2階 大講義室(201)
演者 小川 法子 助教
薬学部 製剤学講座
演題 難溶性薬物の溶解性改善を目的とした固体分散体の開発
内容  近年、薬効ターゲットに対する高い親和性を持ち、高い薬理効果が期待されるとして多くの医薬品化合物が合成・選択されている。経口投与製剤においては、薬効の十分な発揮、副作用の防止、軽減を考え、生物学的利用能に重点をおいた製剤設計を行う必要がある。そのためには、膜透過率と水への溶解性が十分であることが要件であり、経口投与製剤を開発する上で溶解性改善は重要である。
 難溶性薬物の溶解性を改善する方法として、界面活性剤による可溶化や微粉砕による比表面積の増加、非晶質化など様々な方法が報告されている。その中で、難溶性薬物と水溶性高分子 (担体) とで構成する固体分散体化が注目を集めている。固体分散体とは、薬物を不活性な担体中に微粒子または分子状態で分散させた系であり、水溶性高分子の溶解に伴って、薬物が分子状態で溶媒中に分散することで溶解性を向上させるものである。また、薬物を非晶質体として、長期間安定に保持できることも利点である。
 固体分散体の調製方法としては、熔融法や噴霧乾燥法が汎用されている。溶融法は熱により溶融した担体に薬物を分散/溶解させて固体分散体を得る方法である。近年では溶融法の中でも加熱熔融混練(HME) 法を用いた研究が多くなされている。HME法は熱に弱い薬物や添加剤を用いることは困難であるが、水や有機溶媒を必要としないという利点がある。一方、噴霧乾燥法は、液体またはスラリーを気体中に噴霧し、瞬間的に乾燥を行なうものであり、比較的スケールアップが容易で大量生産にも適している。
 我々はこれまでに、難溶性薬物の溶解性改善を目的として、HME法と噴霧乾燥法により、新規添加剤を用いた固体分散体粒子の調製を行い、物性及び溶出挙動を検討している。本セミナーではこれらの研究成果を報告する。

愛知学院大学薬学部医療薬学科
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問い合わせ先:薬学部教務委員会(担当:山本、連絡先:内線2190)

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