第56回 薬学セミナー

日時 平成24年7月25日(水)17:00~18:00
場所 薬学部棟 2階 大講義室(206)
演者 加藤 宏一 教授
薬学部 薬物治療学講座
演題 糖尿病合併症、特に糖尿病性神経障害の病態と治療
内容  神経を構成する主要な細胞には、ニューロン、シュワン細胞などの神経系細胞とともに神経を栄養する細小血管の内皮や周皮細胞など血管系細胞があげられる。これらの細胞において高血糖により様々な代謝異常が起こり、さらには神経栄養血管の代謝異常は血流異常による虚血を引き起こすことにより二次的に神経障害の成因となっている。糖尿病性神経障害の代謝異常の成因には、ポリオール代謝亢進、酸化ストレス、proteinkinase C (PKC)活性異常、グリケーションなどの多種多様な病態が考えられている。
 ポリオール代謝異常は、ポリオール代謝亢進によりリドックス比の偏位、PKC活性異常、Na+/K+-ATPase活性の低下を来して神経機能が障害されると考えられている。この代謝の律速酵素であるaldose reductase阻害薬により糖尿病ラットの神経機能が有意に改善されることから、aldose reductase阻害薬が神経障害治療に有用であるとこが明らかとなっている。高血糖によりPKCの活性異常がおこることも報告されているが、培養シュワノーマ細胞では高グルコースにより PKC活性が低下、さらに膜分画におけるPKC-αアイソフォームが減少するとともに細部増殖能が低下する。それに対して血管系細胞の血管平滑筋細胞ではPKC-βが上昇することにより神経機能障害が惹起されることが明らかとなっており、神経構成細胞によるPKC活性異常の違いが認められている。一方、高グルコース下での酸化ストレス亢進によりニューロンのアポトーシスが誘導されることが報告されているが、α-リポ酸やresveratrolなど抗酸化薬がこのアポトーシス抑制作用を持つことが報告されている。その他、糖尿病状態におけるnerve groth factor (NGF)やC-peptideなどの低下も神経障害の重要な成因と考えられている。
 以上の如く糖尿病では多種多様な代謝異常が同時に惹起され、更に互いに密接に関連することにより神経障害が発症すると考えられているが、これらの成因と治療に関して、演者の実験成果を含めて紹介する。
 また、演者がこれまで行ってきた糖尿病診療およびチーム医療による糖尿病療養指導、今後行う予定であるSMBGデバイスやインスリン注射に関する研究も紹介したい。

愛知学院大学薬学部医療薬学科
名古屋市千種区楠元町1-100
問い合わせ先:薬学部教務委員会(担当:佐藤、連絡先:内線2300)

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