第53回 薬学セミナー

日時 平成24年2月29日(水)17:00~18:00
場所 薬学部棟 2階 大講義室(206)
演者 服部 亜衣 助教
薬学部 薬物治療学講座
演題 わが国の鉄過剰症の遺伝学背景と臨床的特徴に関する研究
内容  ヘモクロマトーシスは、鉄代謝調節分子であるヘプシジンの低下により十二指腸および小腸からの鉄吸収が増加し、種々の臓器障害を引き起こす遺伝性疾患である。症状として肝硬変、糖尿病、色素沈着が特徴である。
 日本人では、ヘモクロマトーシスの発症頻度は欧米に比べて非常に低く、その原因は白人に多いHFE遺伝子のC282Y変異の少ないことがある。我々は、金沢医科大学の友杉直久教授との共同研究として、日本人の遺伝子型としては、ヘプシジンの調節障害を引き起こすトランスフェリン受容体2(TFR2)、ヘモジュベリン(HJV)、ヘプシジン(HAMP)のほか、ヘプシジン分泌の正常なフェロポルチン(SLC40A1)に遺伝子変異のあることを報告してきた。
 また、浜松医科大学の宮嶋裕明教授との共同研究で無セルロプラスミン血症ではヘプシジンの分泌障害のあることを明らかにした。この疾患は、全身性の鉄過剰症であるにもかかわらず血清鉄とトランスフェリンの鉄結合率が極めて低値である。
 したがって、ヘプシジン調節系からみた鉄蓄積機構は、無セルロプラスミン血症はpre-hepatic(肝前型)、ヘモクロマトーシスはhepatic(肝型)、フェロポルチン病はpost-hepatic(肝後型)であると考えられる。
 最近、本邦ではじめて確認されたHAMP型ヘモクロマトーシスでは正常なヘプシジン分子が血中に存在していないことを確認した。今回は、当研究室で解析した症例を中心に、鉄過剰症について報告する。

愛知学院大学薬学部医療薬学科
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