第50回 薬学セミナー

日時 平成23年10月6日(木)10:00~11:00
場所 薬学部棟 5階 504講義室
演者 Michael D. Katz, Pharm D(Department of Pharmacy Practice and Science, College of Pharmacy, University of Arizona)
演題 PHARMACY PRACTICE RESEARCH: OPPORTUNITIES AND CHALLENGES
内容  固定観念にとらわれない研究は、新たな知識の発見や国民への情報の普及につながります。研究は、ある特定の答えや仮説を導き出すための方法論となります。したがって、研究は計画性があること、手段に一貫性があること、厳密であること、および標準的なプロトコールに沿っていることが必要です。薬学部、大学病院、あるいは薬学関係者は長い間研究と共に歩んできました。歴史的には、日本における薬学研究は、基礎研究であったり、研究所で行われるような研究ばかりでした。このような研究がきわめて重要である一方で、他にも様々な解釈を含んだ応用研究として、臨床、実践、社会学的行動学、あるいは医療経済学的研究など種々の研究があります。
 日本の6年制教育プログラムの実施や患者指向型の実践薬学の進歩において、実務研究の必要性やそれに接する機会が増えてきています。薬学の専門性は、社会のニーズに応えるため、薬学教育者のため、研究者のため、あるいは現場(プラクティショナー)のために存在し、日本国民が直面する薬物療法の問題を解決するための研究として進めていかなければなりません。それと同時にこの「進めるべきこと」には新たな発見と新たな薬物の研究も含んでいます。我々は、メディケーションエラーの解決、不適切な薬物使用、薬物療法のモニタリング、貧しい患者へのアドヒアランス、医療経済学的な問題も解決していく必要があります。
 社会のニーズに応えるため、我々は有能かつ実務ができる研究者として薬剤師を教育、訓練する必要があります。米国のPharmDのカリキュラムにはリサーチデザインや方法論、生物学に必要な統計学、文献評価のコースも含まれています。米国の薬学部の学生は、計画した研究の最終仕上げを卒業前に行うことが必須とされます。もちろん、有能な実務研究者になる学生を教育するために、我々教員はこれらの領域のスキルが必要となります。実務家教員は、日本の薬学部では比較的新しい位置づけになると思われます。日本の薬学部では臨床教員(clinical faculty)はほとんどおりませんが、米国の臨床教員(clinical faculty)は、患者の管理責任に加えて授業もあり大きな負荷を負っています。全ての大学教員は研究を実施しなければならない一方で、日本の薬学部は、実践に基づいた研究を、基礎研究と同等に評価していかなければなりません。また、実務家教員は、基礎系教員と同等なレベルの研究を行っていかなければなりません。そして、実務家教員は実務的研究、授業、業務に関する知識を基に教育を進行させていくことができなければなりません。
 専門性の高い多くの研究歴を欲する薬剤師のために、大学院や卒後教育に関するトレーニングの機会がなければなりません。米国において我々は、クリニカルフェローやレジデントプログラムと同様なPhDクリニカルサイエンティストプログラムを運用しています。このようなプログラムが日本における薬学の発展にも必要です。
 薬学教育の改革が非常に厳しくなっていく一方で、日本の国民には実務研究を通して訓練された薬剤師が必要になると思われます。
 薬学部と大学病院は、今後の前進のためにお互いが高め合う責任を持つ必要があると思われます。

愛知学院大学薬学部医療薬学科
名古屋市千種区楠元町1-100
問い合わせ先:薬学部教務委員会(担当:佐藤、連絡先:内線2300)

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