愛知学院大学 薬学部 医療薬学科

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第77回薬学セミナー

日時

平成26年10月15日(水) 17:00~18:00

場所

薬学部棟2階 大講義室 (201)

演者

薬学部 衛生薬学講座 李 辰竜 講師

演題

有害重金属毒性発現に関わる標的分子の解明

内容

カドミウムや水銀等の有害重金属は、生体に対して種々の毒性を示すことが知られているが、その分子レベルでの毒性発現機構については、ほとんど解明されていないのが現状である。本演者は、主にメチル水銀やカドミウムの毒性発現分子機構に関する研究を進めてきた。

メチル水銀は、水俣病の原因物質であり、神経障害を主な中毒症状とする環境汚染物質である。演者らは、ヒト由来神経芽腫細胞において培地中へのピルビン酸の添加によってメチル水銀毒性が著しく増強されることを見いだした。ピルビン酸はミトコンドリア内に取り込まれ、その代謝経路を介してATP産生に関与しているが、メチル水銀の毒性増強作用にも関与していることは毒性学的に興味深い知見である。

カドミウムはイタイイタイ病の原因物質として知られており、腎臓の近位尿細管機能障害が慢性カドミウム中毒患者に共通して認められる。演者らは、マウスやヒト由来の腎近位尿細管上皮細胞(HK-2細胞)を用いて、がん抑制因子であり、アポトーシス誘導因子であるp53タンパク質の過剰蓄積が、カドミウムの毒性発現に深く関与していることを明らかにした。なお、p53タンパク質の細胞内分解にはUBE2Dタンパク質群が関与しているが、カドミウムはUBE2Dタンパク質群の遺伝子発現を抑制することによりp53を過剰蓄積させることも見いだした。さらに、カドミウムによる転写因子の活性変動をProtein/DNAアセイを用いて網羅的に解析したところ、新規のカドミウムによる活性変動転写因子の同定にも成功した。しかも、カドミウムによって活性が変動した転写因子のうち、FOXF1がカドミウムによるp53過剰蓄積に関与するUBE2Dタンパク質群の転写に関わっていることも明らかにしている。

本セミナーでは、メチル水銀およびカドミウム毒性発現に関わる標的因子に関するこれまでの研究成果、並びに今後の展望について発表する。

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