愛知学院大学 薬学部 医療薬学科

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第72回薬学セミナー

日時

平成26年5月28日(水)

場所

薬学部棟2階 大講義室 (201)

演者

國正 淳一 教授
薬学部 臨床薬物動態学講座

演題

塩酸バンコマイシンを含有する骨セメントビーズによりバンコマイシン血中濃度が高値となる可能性とその基礎的検討

内容

バンコマイシンなどの抗菌薬を含有させた高分子のポリメチルメタクリレート(PMMA)骨セメントが、整形外科手術で感染症の治療と予防のために院内製剤として使われている。抗菌薬を含有させた骨セメントの使用は全身的な毒性を避け、局所での治療効果が期待される。バンコマイシン含有骨セメントビーズ(以下、バンコマイシンビーズ)からのバンコマイシンの緩やかな放出は報告されているが、放出の正確なメカニズムは知られていない。我々はバンコマイシンビーズを使用した患者のうち数名の患者において、バンコマイシンの血中濃度が異常に高値になることを経験した。薬物放出特性の変動を抑制するために,バンコマイシンビーズの粒子径と重合時間の影響を放出試験により調べた。

粒子径の違いによる放出率は小サイズで約6.0%、中サイズで4.0%、大サイズで2.5%であった。サイズの小さいバンコマイシンビーズで溶出率が高くなることが示された。

硬化時間の違いによる放出率は硬化時間が15分のもので8.2%、20分及び60分のもので5.3%、180分で4.0%であった。硬化時間が短いもので速い薬物放出が観測された。

セメントの作製条件の違いが放出速度に影響を及ぼすことは示されたが、VCM血中濃度が高値となった理由については他の影響も考慮する必要があり、さらに検討を加えた。

セメント粒子径と重合時間の変動により,薬物放出時間が変動することが明らかとなったことから、バンコマイシンビーズは整形外科手術において慎重に使われなければならず、PMMAに代わる骨セメントの材料が必要とされることが示唆された。

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