大学院カリキュラム

履修方法および学位の授与

(1)履修方法

  • 専門科目の2つの分野から1つを選択し、当該分野のうちから主として履修する科目(主科目)を2単位、副として履修する科目(副科目)として同一分野または専攻内の他分野から8単位以上修得
  • 共通科目から4単位、主科目の特別研究または課題研究(社会人学生対象)を8単位、主科目の属する特別演習8単位を修得

(2)学位の授与

  • 所定の期間在学し、総計30単位以上を修得し、かつ最終試験及び修士論文の審査に合格したものに修士(薬科学)の学位を授与します
  • 修士課程では、国際的視野から薬科学及び医療薬学分野におけて幅広く深い学識を備え研究能力と高度な専門知識を習得していることが課程修了の要件です。

授業科目(専門科目・共通科目)

区分 授業科目 単位数 備考
専門科目 医療分子薬学分野 医薬品化学特論    
天然薬物作用学特論 講義2  
環境衛生学特論 講義2  
免疫細胞情報学特論 講義2  
分子薬効解析学特論 講義2  
微生物学特論 講義2  
医療機能薬学分野 化学療法学特論 講義2  
製剤学特論 講義2  
医療薬剤学特論 講義2  
神経薬理学特論 講義2  
臨床薬物動態学特論 講義2  
疾患病態治療学特論 講義2  
共通科目 医療分子薬学 講義2 オムニバス
医療機能薬学 講義2 オムニバス

授業時間(平成21年度)

社会人学生受け入れに対する対応として、専門科目・共通科目の講義は午後6時から7時半に行っています

修士1年次春学期

曜日 時間 科目
18:00~19:30 環境衛生学特論(専門科目)
18:00~19:30 免疫細胞情報学特論(専門科目)
18:00~19:30 天然薬物作用学特論(専門科目)
18:00~19:30 医療機能薬学(共通科目)

修士1年次秋学期

曜日 時間 科目
18:00~19:30 分子薬効解析学特論(専門科目)
18:00~19:30 微生物学特論(専門科目)
18:00~19:30 医薬品化学特論(専門科目)

履修科目の概要

1.専門科目

医療分子薬学分野

天然薬物作用学特論・・・教授:井上  誠、講師:田邊 宏樹
数多くの植物由来天然化合物は医療現場で治療薬として、また、研究用試薬として使用されており、疾患の治療あるいは自然科学分野の基礎研究において必須のものである。
さらに、複数の生薬より構成される漢方薬は、複合製剤として新薬(合成薬)とは異なる特長を有する薬物として臨床現場での使用が増加している。
本特論では、漢方薬を始めとする天然薬物あるいは天然化合物の有用性を、これまでに集積されてきた薬理学的、薬剤学的、生化学的、さらに、分子生物学的知見を詳述し検証する。
さらに、今後の医療における天然薬物・化合物の役割・展望について、最新の知見・研究成果を修得させる。
生体機能化学特論・・・教授:横沢 英良、講師:武田 良文
生体機能の制御機構として、ユビキチンとユビキチン様タンパク質による翻訳後修飾やタンパク質分解が重要な役割を果たしている。
本特論では、ユビキチンとユビキチン様タンパク質による翻訳後修飾及び細胞内タンパク質分解の分子機構と生理機能を概説し、生体機能制御機構について修得する。
さらに、それらに関する疾患や創薬研究を概説し、創薬研究のストラテジーについて修得する。
また、医薬品開発の現状と将来についても併せて習得する。
環境衛生学特論・・・教授:佐藤 雅彦、准教授:藤原 泰之
ヒトの健康に対して悪影響を与える環境有害因子について、それらの健康影響評価とその対策などを講述し、環境衛生学研究が果たすべき役割とその重要性について解説する。
さらに、様々な環境有害因子の中で、カドミウム、水銀、ヒ素および鉛などの有害金属類に焦点を絞って、各種有害金属類による環境汚染並びに健康被害に関する現状を講述する。また、有害金属類の毒性発現機構やそれら金属類に対する生体防御機構について、個体(実験動物)、細胞および遺伝子レベルでの最新の研究情報を含めて概説する。
免疫細胞情報学特論・・・教授:中西 守、准教授:古野 忠秀、講師:伊納 義和
免疫学は感染症の予防や撲滅、白血病や自己免疫疾患の診断や治療に大きく貢献してきた。
生体防御に関与する免疫系の細胞情報とその制御機構の理解は、エイズ、変異インフルエンザウィルスや悪性腫瘍などの未だ対応手段が十分に確立されていない疾病に対しても多くの重要な情報を提供すると考えられる。
本特論では、免疫学の基本となる反応系、抗原認識機構、獲得免疫系、感染免疫系での分子細胞機構を追究する最先端知識と技術を修得するとともに、それらの技術を駆使した免疫系での分子認識、情報伝達と生体防御の最新の動向を修得する。
また、臨床免疫と強く関わっている免疫不全、アレルギー、腫瘍免疫、自己免疫疾患等についても最新の知識を修得する。
分子薬効解析学特論・・・教授:村木 克彦、講師:波多野 紀行
疾患治療薬の薬効解析は分子レベルから個体レベルでの生体に対する薬効情報を統合することで可能となる。
分子薬効解析学では、薬物の作用点としてイオンチャネルに着目し、イオンチャネルの発現制御の理解を目指したトピックスを解説する。
講義では、ヒトを中心としたほ乳類細胞に発現したイオンチャネルの転写調節、エピジェネティクス調節、タンパク質分解制御、小型RNAによるイオンチャネル遺伝子の発現制御について解説する。
また薬効の解析には不可欠な、生物統計学についても理論的背景、先端的手法、応用実例を修得させる。

医療機能薬学分野

病原微生物学特論・・・教授:河村 好章、講師:森田 雄二
世界で感染症による死亡者は全死亡者数の1/4程を占めている。
発展途上国では古くから知られている感染症が未だに多くの人命を奪い、一方先進国では、新興感染症・再興感染症が出現し、その対策に苦慮している。
本特論では、このような感染症の変遷の背景を踏まえ、博士の学位に相応しい医療人として感染症に対する深い知識、生体防御の詳細な機構、各種抗菌薬・消毒薬の適正な使用方法の理論を学び、さらに微生物汚染防止を率先して実践できる人材育成を目的とした講義を行う。また、これら感染症や抗菌薬作用・耐性の機構解明に不可欠な分子生物学的手法について最新の技術、応用例について修得させる。
化学療法学特論・・・教授:田中 基裕、講師:小幡 徹
がんの発生から増殖・転移に至るメカニズム、およびそれに関与する分子が蛋白質・遺伝子レベルで明らかにされてきている。
がん細胞における分子レベルの特定標的を特異的に攻撃する分子標的治療剤を見出すことにより、従来の抗がん剤の弱点を補った新しいタイプの抗がん剤を開発する試みが行われている。
しかし、これらの分子標的治療薬が基礎研究、開発研究、臨床研究を経て医療現場に届けられるには様々な問題をクリアしなければならない。本講義では新ターゲット抗がん剤の研究開発の現状と問題点を従来の抗がん剤のそれと対比しながら解析・考察し、今後の動向について修得させる。
医療薬剤学特論・・・教授:山村 恵子山本 浩充、講師:浦野 公彦
医薬品の適正使用や多剤投与等による副作用回避には医療薬剤学の知識と製剤学的観点からの技術の修得が必須となる。
本特論では、医薬品適正使用推進の評価・解析法、食品と医薬品の相互作用の評価・製剤学的な解析法、医療現場における薬剤師の安全管理活動、セルフメディケーションを推進するために必要な薬剤師の評価と介入、疼痛回避のための局所麻酔薬の特殊製剤デリバリー現状と展開、薬物の体内動態・薬効に及ぼす変動要因の解析とバイオマーカーの確立に関する研究、および薬物の輸送担体に関する研究におけるポリアミン輸送系の機能評価等について修得する。(オムニバス方式/全15回)
(山村 恵子/7回)
  1. 医薬品適正使用を推進するための評価・解析方法
  2. 食品と医薬品の相互作用を防止するための評価解析方法
  3. セルフメディケーションを推進するために必要な薬剤師の評価と介入
  4. 在宅療法における薬剤管理
  5. 後期高齢者の薬剤選択における評価
  6. 抗凝固療法における医薬品管理と服薬指導
  7. 認知症患者における医薬品管理と服薬指導
(山本 浩充/3回)
  1. 後発医薬品の開発と臨床使用
  2. 健康食品の成分解析
  3. 疼痛回避のための局所麻酔薬の特殊製剤デリバリーの現状と展開
(浦野 公彦/5回)
  1. 医療現場における薬剤師の安全管理活動
  2. 透析患者における医薬品管理と服薬指導
  3. 障害を持つ患者とその介護者のための薬剤選択と服薬指導
  4. 薬物の体内動態・薬効におよぼす変動要因の解析と関連するバイオマーカーの評価法
  5. 薬物の体内動態に関わる輸送担体の機能 評価・解析方法
神経薬理学特論・・・教授:櫨 彰、講師:大井 義明
中枢神経ネットワークについて、これらを構成するニューロンの機能、形態、シナプス伝達機序、関連する神経伝達物質、受容体および細胞内情報伝達系について講義する。
また、情報伝達の処理や統合機能(短期増強、長期増強など)についても講義する。これらを基に、多機能ネットワークである延髄呼吸中枢および咳中枢を中心に神経回路の機能的スイッチング(呼吸パターンから咳パターンへの切り替え機構)について解説する。
これらより、中枢神経ネットワークの構造と機能、疾病との関係、作用薬の機序について修得させる。
疾患病態治療学特論・・・教授:杉山 成司脇屋 義文、講師:梅村 雅之上井 優一巽 康彰
遺伝子異常に基づく疾患数は現在18,000以上判明しており、今後も増えると予想される。
しかし、歴史的には1908年Garrodによってメンデルの法則に照合する先天性代謝異常症が提唱されたことに始まり、その概念は今も基本的に変わりない。先天性代謝異常は糖、アミノ酸、脂質、金属、核酸代謝など幅広く、診断法や治療法もそれぞれに多彩である。
個々の代謝異常の頻度は決して多くないが、総体的に見ればそれほど稀ではなく、見逃すと致死的な場合もあるこれらの疾患は、逆に早期発見・治療によって良好なQOLを長期に保持することも可能といえる。
本講義では、代謝異常症とその薬物治療を通し、病態学的なメカニズムを理解し、新規診断・治療法開発に向けた研究へのアプローチ法について修得する。 (オムニバス方式/全15回)
(杉山 成司/6回)
  1. 先天性代謝異常症とその歴史的背景
  2. 遺伝子異常症の分類
  3. 病因論と病態(総論)
  4. 核酸代謝異常症と薬物治療
  5. 代謝性ミオパチーと薬物治療
  6. マススクリーニングと日常診療への応用
(脇屋 義文/5回)
  1. 代謝異常症の薬物治療(総論)
  2. 代謝異常症における薬物動態
  3. 脂肪酸代謝異常症と薬物治療
  4. 高アンモニア血症と薬物治療
  5. 臨床研究へのアプローチ
(梅村 雅之/1回)
  1. 糖代謝異常症と薬物治療
(上井 優一/2回)
  1. アミノ酸代謝異常症と薬物治療
  2. 有機酸代謝異常症と薬物治療
(巽 康彰/1回)
  1. 遺伝子カウンセリング

2.共通科目

医療分子薬学

医薬品化学、天然薬物作用学、環境衛生学、免疫細胞情報学、分子薬効解析学、微生物学の概要を講義し、疾病の予防や医薬品の開発および薬効解析に関する分子レベルから個体レベルまでの幅広い基礎知識を修得させる。

医療機能薬学

化学療法学、医療薬剤学、臨床薬物動態学、神経薬理学、製剤学、疾患病態治療学に関する医療薬学分野の基礎知識を与え、現代医学に関する認識を深めさせるとともに、医薬品の適正使用に関する深い知識を修得させる。

3.特別研究・課題研究(社会人学生対象)

医療分子薬学分野

医薬品化学
遷移金属触媒、特にNiおよびPd触媒を用いる炭素ー炭素結合、炭素ーヘテロ原子結合、ヘテロ原 子ーヘテロ原子結合の形成反応に関する研究を行う。さらにこれらの反応を複素環の新規合成法の開発に応用する。【担当学部講座
天然薬物作用学
生活習慣病の予防・治療をめざし、漢方方剤の作用機序解析、有用な活性を有する天然物の探索、食品成分の生体機能調節作用の解析を行う。また、天然薬物研究の現状と進展に対する動向を取り上げて、課題研究を行う。【担当学部講座
環境衛生学
環境有害金属による毒性発現機構を分子レベルで解明すること、および生体内防御因子としてのメタロチオネイン(金属結合タンパク質)の役割を明確にすることを目標に、遺伝子改変マウスや培養細胞を用いて研究する。【担当学部講座
免疫細胞情報学
感染症の予防・撲滅や悪性腫瘍治療の基盤技術を修得するため、免疫応答の分子機構解析・免疫系と神経系のクロストーク解析の推進、ならびに、ナノ遺伝子ベクター・胚性幹細胞を活用した先端技術の修得・推進を図る。【担当学部講座
分子薬効解析学
生体機能分子の生理・薬理・生化学的機能を遺伝子レベル、細胞レベル、個体レベルで、多層的に解析し統合することで、生物における分子間および細胞間情報ネットワークの多様性と可塑性を研究する。【担当学部講座
微生物学
バイオフィルムやフローラなどの微生物集合体を総合的に解析することにより、未知の疾病発症機構の解明、診断方法の開発、治療方法の探索、さらには新たな感染症の予測まで、最新の技術を駆使して研究する。【担当学部講座

医療機能薬学分野

化学療法学
がん増殖の分子機序と制御、新規抗がん剤の開発と作用機序、抗がん剤感受性規定因子の分子機序などの研究を通して「がん」に関す理解を深めると共に、新しい治療法の開発を共に考える。【担当学部講座
製剤学
球形晶析法を応用した生体内分解性、生体適合性高分子からなるナノ粒子を薬物キャリアとし、その表面を機能性物質で修飾することで、疾患に最適化したドラッグデリバリーシステム構築に関する研究を行う。【担当学部講座
医療薬剤学
口腔粘膜潰瘍病変の治療を目的としたステロイド含有貼付フィルムの開発に必要とされる製剤設計(安定性・放出挙動・利便性)、及び薬物の体内動態・薬効に及ぼす変動要因の解析について研究する。【担当学部講座
神経薬理学
電気生理学・神経薬理学および免疫組織学的手法を用い、中枢神経ネットワーク(特に、呼吸中枢・咳中枢)の構造と機能の解明ならびに中枢神経作用薬の機序の解明に関する研究を行う。【担当学部講座
臨床薬物動態学
薬効・副作用に関連する薬物トランスポーターの分子機構を解明するとともに各種のトランスポーター機能を利用した個別化薬物療法の構築、臨床製剤学的特性およびPK/PD解析に基づいた薬物投与設計について研究する。【担当学部講座
疾患病態治療学
先天性代謝障害、特に有機酸代謝異常やβ-酸化異常の病態解析と新しい治療法の確立。脂肪酸代謝に影響を及ぼす薬剤の薬理作用解析と臨床応用について。【担当学部講座

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