・炎症性腸疾患(IBD)の起因微生物の特定と治療・予防への展開

研究テーマ

・細菌の分類・同定と感染症の診断・起炎菌の迅速検出に関する研究

・抗菌薬耐性に関する研究〜薬剤耐性菌感染症克服を目指して〜

左の電子顕微鏡写真はHelicobacter cinaediというらせんの形をした細菌のものです。この菌は、近年分離報告が増加しており、複数の医療施設で院内感染を引き起こし、問題となっています。「新興感染症」として位置づけることができる新たな感染症起因菌であり、他大学との共同研究により本菌種の全ゲノムを決定しました。

・新興・再興感染症の原因菌の特徴と病原性に関する研究

 また河村はICD (Infection Control Doctor) の資格も取得しておりますので、院内感染をはじめ、様々な感染症の原因菌の特定、疫学的調査などを通して細菌分類学で培った技術を社会還元したいと思っています。

 細菌分類学とは“未知の菌に対し、その特徴を明らかにし(狭義の分類)、名をつけて(命名)、その菌であることを決定できる方法(同定)を提唱、運用する”事を通し、その知識を集積して、生物の多様性とその相互作用を研究する学問であるといえるでしょう。

 当研究室では、現在の細菌分類学で主流となっているpolyphasic taxonomyの考え方に則り、細菌の形態、生理生化学性状、化学組成分析、遺伝子の塩基配列に基づく系統分類、ゲノムDNA夾雑試験、等の各種技術を駆使し、臨床分離株のみならず、環境由来菌などの分類・同定を行っています。

 クローン病においても、同様のアプローチで起因微生物の特定を行う予定です。それら起因微生物の情報から治療薬の選定、さらにはIBD予防へと展開していきたいと思っています。

 IBDに含まれる潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病は、ともに国の特定難病性疾患に指定されています。食の欧米化に伴い、IBD患者は1991年に3.3万人であったものが2009年には14.4万人と4倍以上に増えており、今後ますます患者増が懸念される難疾患です。
 無菌状態ではIBDが発症しないことから、その発症には腸内細菌が関わっていることが強く示唆されており、特定の細菌の刺激に始まり、それに続く不適切な炎症反応の結果、発症すると推定されています。我々はDSS(デキストラン硫酸Na)投与によるUC発症マウスと健常マウスの腸内細菌叢をDGGE電気泳動法および16S rRNA-metagenome解析法により精緻に分析し、UC発症マウスに有意に存在する細菌群を見出しました。それらをDSSと共に投与したことろ、腸管クリプトの病的変化、免疫細胞の局在などを確認できました。

多くの抗菌薬が開発され広く使用されるようになった現代、乱用や誤使用などによる抗菌薬耐性のリスクが増大しています。多剤耐性菌の院内感染問題などを含め、抗菌薬耐性の脅威への対策の必要があります。特に多剤耐性グラム陰性桿菌感染症は、治療に有効な治療薬がほとんどなく、深刻な問題となっています。

我々の研究室では、細菌の薬剤耐性機構を、特に抗菌薬透過性バリアである多剤排出ポンプに焦点を当て、遺伝子レベルから解析しています。この研究の一環として、多剤耐性緑膿菌MDRPのアミノ配糖体耐性の主要な分子機構を報告しています。
多剤耐性菌の耐性機構を阻害することができれば、耐性菌に対して既存抗菌薬の効力を復活させることができるようになります。このような観点から多剤耐性菌に有効な医薬品の開発を目指しています。

感染患者の治療を行うには細菌のMIC(最小発育阻止濃度)を知る必要があります。我々はH. cinaediの発育に適した液体培地を見出し、MIC測定のための微量液体希釈法を確立しました。それにより国内において分離される本菌種の多くはキノロン系薬剤等に耐性であることが分かってきました。さらに、本菌種の迅速検出方法の開発、未解決の感染ルートの解明、分子疫学調査を中心とした研究を行っています。

 日本の薬学系微生物学担当研究室で細菌分類学を研究の中心に位置づけている例は無く、当講座は日本の薬学系大学で細菌分類学を専門とする唯一の研究室です
 教授の河村は、民間企業研究員時代に2つの細菌同定キットの開発を手がけ、続く12年間は岐阜大学医学部微生物学講座にて、細菌分類学の研究に携わってきました。これらの経験を生かし、今後も細菌分類学に貢献して行きたいと思っています。

 

 院内感染や薬剤耐性菌の問題など、感染症をめぐる現代の医療はますます複雑化し、原因菌の迅速かつ正確な特定が求められています。

さらに、特定の細菌を迅速に検出するためのDNAプローブの設計開発や、網羅的な微生物叢










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