超高齢社会を迎える日本において生活習慣病、加齢性疾患が増加しており、さらにそれらが複雑に絡み合い、管理・治癒を難しくしている。65歳以上の高齢者では、高血圧・動脈硬化・狭心症・心筋梗塞などの循環器系の疾患が際立って多くなっている。さらに、骨格筋系及び結合組織の疾患が悪性腫瘍についで3番目に多い疾患になっている。日本国民の平均寿命は男女ともに80歳以上である一方、健康上の問題が無い状態で日常生活が送れる期間である健康寿命は男性71.19歳、女性74.21歳(平成25年度)であり、男性では約9年間、女性では約12年間は介護が必要な状態であることが示されている。この健康寿命を縮める原因となる疾患は、脳卒中・虚血性心疾患・呼吸器疾患がトップスリーであり、関節疾患及び骨折転倒,認知症なども大きく関与している。これら要介護状態を防ぎ、健康寿命を延ばすためには、適切な予防医療を推進・普及すること、及び、健康寿命を短縮する原因となる疾患を予防・軽減させることが重要である。健康寿命を短縮する原因となる生活習慣病や加齢性疾患の多くは、その発症・進展の基盤に低強度の慢性炎症が関与しており、予防・治療方法の開発にパラダイムシフトが求められる。
この様な観点より、当研究室では生活習慣病及び加齢性疾患に加え、人のQOLを著しく低下させる炎症免疫疾患を標的疾患として、天然薬物(天然物,薬用植物,生薬,漢方方剤)の疾患予防・治療への応用を目指した基礎研究を行っている。
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