研究内容2009年度

臨床薬剤学教室では育薬を中心に、患者が医薬品を適正に使用するために
 (1)医薬品適正使用の推進
 (2)患者にやさしい薬の投与方法の開発と臨床応用
 (3)患者にやさしい薬の剤形の開発と臨床応用
を目指し研究しています。


(1) 抗凝固薬およびアルツハイマー認知症治療薬の適正使用推進の研究
 薬の適正使用の研究の手法として、“薬剤師外来”において患者および家族(介護者を含む)の理解度とQOLを向上させるための服薬教育を行っています。抗凝固薬の適正使用の研究ではすでに300名以上の患者を対象とて、服薬指導の後には理解度の向上(p<0.001)が得られました。治療成績の向上も得られました。さらに、出血イベントなどの有害事象の回避の成果も出ています。アルツハイマー認知症治療薬の適性使用の研究では介護者の服薬介助のコンプライアンスが向上しています。この、手法を用いることで、高齢社会にニーズの高い医薬品の適正使用の研究を発展させ、疾病の進展予防に貢献します。

(2) 患者にやさしい薬の投与方法の開発と応用
@ 下肢動脈閉塞治療薬プロスタグランディンE1のイオントフォレーシスデリバリーの開発と臨床応用
〜介護を必要としない生活をめざして〜
イオントフォレーシスデリバリーシステムによる局所的薬物投与は非侵襲的な方法で、従来の注射による全身的投与に比べ副作用が抑えられ、より大きな効果が期待できます。末梢循環不全に関連する虚血性潰瘍や安静時痛へのQOL改善のために下肢静脈の血流を改善するためにプロスタグランディンE1の非侵襲的局所投与方法を目指し、イオントフォレーシスデリバリーの基礎的研究と臨床的研究を行いました。その結果、プロスタグランディンE1のイオントフォレーシスデリバリーは健常人において安全性が確保されました。また、25歳以上の閉塞性動脈硬化症およびバージャー病患者(15名)を対象としたプロスタグランディンE1(20μg)のイオントフォレーシスデリバリー臨床応用でも血流の改善が見られました。患部の切断を回避するための新たな薬物デリバリーとしてさらに検討を重ねていきます。

A シャント形成術時の麻酔薬リドカインのイオントフォレーシスデリバリーの開発と臨床応用
 シャント形成および皮膚切開術時における痛みからの回避を目指した研究です。透析患者にとってシャント形成術は施行時の疼痛コントロールのための麻酔薬投与システムとして非侵襲的で、かつ麻酔作用の発現が早く、安全であることが望まれます。すでに健常人を対象とした局所麻酔効果、使用感、副作用の検討を行い、リドカインのイオントフォレーシスデリバリーの有用性を確認しています。皮膚の発赤や掻痒感などの有害事象の発現は観察されませんでした。現在、透析患者さんを対象にリドカイン貼付剤とイオントフォレーシスデリバリーとの効果比較およびQOL向上の比較研究を行っています。

(3) 患者にやさしい薬の剤形の開発と臨床応用
@脳梗塞再発予防を確実にするためのワーファリン口腔内崩壊錠の開発研究
 高齢社会に伴い血栓性疾患は増加し、脳梗塞の一次、2次予防の重要性は高まっています。脳梗塞の臨床病型の中で、心原性脳塞栓症は20〜30%を占め、最も重篤な症候を呈し、予後が悪いことで知られています。また、心房細動の頻度は加齢とともに増加します。ワーファリンは静脈血栓が存在する場合には第一選択薬であり、脳梗塞再発予防のためには患者の服薬コンプライアンスが重要な鍵となります。しかしながら、脳梗塞予後の嚥下障害は服薬コンプライアンスの低下につながります。水なしでも口腔内で速やかに崩壊し、簡単に服用できる剤形はコンプライアンスの向上に貢献できるため、近年、アルツハイマー認知症の薬や制吐薬で臨床使用されています。ワーファリンは個人によって服用量に大きな差があり、適切な用量調節が行われなければ出血や血栓症を引き起こすため、服薬コンプライアンスの保障は抗凝固療法を成功させるための重要な課題です。治療を成功させるための服薬支援が望まれます。基礎的研究としてワーファリン口腔内崩壊錠の製剤化を行い、崩壊速度や製剤中のワーファリンの安定性を評価しました。現在、確実な服用が行えるよう患者にも介護者にもやさしいワーファリン口腔内崩壊錠の開発に取り組んでいます。

A飲み間違えをしないための凹凸PTP開発研究
 多規格ある医薬品の誤飲を防止するための包装開発を進めています。ワーファリンは0.5 mg, 1mg,5mgの3規格があり、0.5 mg, 1mg,の組み合わせ処方が全体の4割を占めています。ワーファリンは遮光包装のため、特に、視覚障害者にとっては製剤の区別が極めて困難です。Safety patientの観点から凹凸PTP開発研究に取り組んでいます。